ドクターインタビュー

いのちと向き合う先輩たちからみる
高度救命救急とは?

大分大学医学部附属病院 高度救命救急センター
救命救急科 専攻医

Q.現在行っている業務はどんなこと?毎日どんなことをしているか教えてください。

國武 直人先生

病棟業務が中心です。リーダー担当の日は、患者さんに必要な業務を後輩ながらドクターに出しまくるという仕事をしています。

松村 卓哉先生

他科の先生との調整や、手術の日程確認、治療方針を確認するのが、実は若手の仕事という…

國武 直人先生

かつ、病棟で何かあれば、看護師さんに呼ばれて薬剤を調整したり、血液培養を取ったり治療したりもします。病棟にいれば、自分で治療方法を考えながらドクターに電話して、たとえば「抗菌薬始めたほうがいいんじゃない?」など指示を仰ぐような。急変がなければ、経過が悪くなっていないか、いつ退院できるかとか考えながらできる手技はやっています。鍛えられていますね。

松村 卓哉先生

他科の先生との調整や、現場主義だね。1年目なので外来はまだやっていないけれど、予定では、もうそろそろ増えてくるかな。

髙畑 絢子先生

今まで外来にも何度か行っていますけど、基本は病棟ですね。

國武 直人先生

忙しさは日によって違うけど。「気が付けば夕方…」みたいな。帰ったらバタって日もあるし。でも、オフには、やりたいことはやっている感じですね。
僕は買い物が好きで、服を買ったり。あとは、ドライブが好きなので友達と大分県内行けるところはすべて行く、くらいの勢いで豊後高田とか朝地とか。自然を見に行くのが好きで、ドライブ系プチ旅行に出かけますね。
医大生って車持ちが多いんですが、僕は学生の時に車を持っていないくて。研修医時代は「大分の行ったことがないところに行ってみよう」とドライブしていました。「竹田にヘリが飛びます」となって、全然土地勘がないのも困るかなと思って。今では、だいぶ土地勘がついてきて、なんとなく場所がわかるようになってきましたね。結果として仕事にも就いてきているかな。

松村 卓哉先生

僕は、家に帰ったら基本ダラーっとしてますね(笑)遊ぶときは遊ぶし、比較的オンオフはしっかりしています。絶対に呼ばれないとわかっている日には呑む!し。休みは、遠出もできますしね。

髙畑 絢子先生

私は未就学の子どもがいるから、オフは家で子どものお世話したり、ですね。仕事が終わって家に帰れば自由だから「今頑張ろう!」って。当直も「朝まで頑張れば帰れるぞ」って感じで乗り切ります。

國武 直人先生

”診療、研究、教育”の三本柱でやるスタンスが理想だとは聞いているけど…今の時点で病棟の仕事以外の、研究や論文にまったく手が付けられてはいないから。そこは心残りではありますね。

松村 卓哉先生

そこまでは現状、手が回らないね(汗)

Q.高度救命救急センターを選んだ理由、きっかけは?

國武 直人先生

正直にいうと、学生の頃は「内科に進もう。のんびりのんびり」と思っていたんですけどね。実習に来た時に先生がしっかり教えてくれて、ドクターカーに乗った経験もあって良いなと思いました。初期研修に入って「自分が何かしないと人が亡くなってしまうという時にできる人って、救急だな」と思って選びました。

松村 卓哉先生

僕は、小~中学生の頃から救急志望だった。テレビドラマの『救命病棟24時』を見てね。順調とはいえないまでも、夢を叶えました。江口洋介(が演じたドラマの役柄)になりたいと思ってね(笑)。まあ、現実は、これからです。
1年のころから救急科に行っていたし、医局の先生方が良くしてくださったのが入局の理由としては大きいな。それで、救急かつ、大分に残ってここに入ろうと思いました。新しい先生も来られて、雰囲気が変わってきているので、新しい風に乗れるというか。風紀に乗っていくのも良いかなと思っています。地元(茨城)でなくても、楽しんで働けるかなと思ったんだよね。

髙畑 絢子先生

私は、救急はまったく考えていなくて、100%内科だと思ってた。外科は大変そうだし、マイナー科にも興味は持てずにいたし。
ただ、「救急科は入らないと思うから、研修の時に見ておいた方がいいよ」とアドバイスをもらって、3次救急の病院で2年研修したら、それが意外と楽しかったんですよね。あと、医者として、できるべきものが詰まっていると感じたので。
研修医の時に経験したのは、救急対応が基本だったけど、1年目はすごく怖くてね。何をどうすればいいかわからないし。ウォークインの方も救急も両方見ていて、じきに救急車に慣れて、ある程度何をするかが分かってきたら、それが面白みになってきた。先生方も連絡すればすぐに助けてくれるし。でも、普通に自分で車で運転して来て、「実は心筋梗塞でした」とかあるもんね。

國武 直人先生

歩いているか、救急車かって結局関係ないんだなって思うよね。

松村 卓哉先生

逆に救急車じゃなくて歩いてきても大丈夫だったんじゃない?という方もいるし。

髙畑 絢子先生

でも、ちゃんと冷や汗かきながら、目の前の人が本当に医療を今すぐ介入する必要があるかないか、その判断をするのが自分の責任にかかわってくるし。しっかり見つけられるようになった時や、所見としてはあまりないけど、それでもおかしいと思うところをちゃんと伝えるとか。そんなことが少しずつできるようになって、それが楽しみに感じるところだと思いますね。

Q.実際に働いてみてギャップはありましたか?また、自分の中で変化はありましたか?

國武 直人先生

入る前は、本当に毎日「やばい」って患者さんがいると思っていたけど、本当に大丈夫な日もあるというか。落ち着いている日もある、ギャップというのかな。日に寄りますけどね。

髙畑 絢子先生

ただ、「今日何もないね」と言っていたら来る。

松村 卓哉先生

救急あるある。だから、口に出して言わないようにしていますね(笑)
僕は、医学生になった段階で感じてはいましたが、ドラマはドラマなんだなって(笑)あそこまで現実でいろいろできるようになるには、知識もそうだし体力も持たないし、やっぱり江口洋介(役)は無理だなと。ただ、学生になってから、その中でもイメージ自体は固まって、処置をしてうまく次の科につなげるだとか、見える範囲は完結したいところもありますけど。イメージはそのままで来ていますね。

髙畑 絢子先生

私は…そもそもが救急を選ぶと思っていなかったので(笑)。研修からかかわり始めて、知ったり気づくことのほうがイメージを持つより先だった、かな。

Q.業務を通じて感じること(大変なこと、やりがい、学んだこと)はありますか?

國武 直人先生

交通事故で、しゃべれなかったような人が転院していった時はうれしかったり。気管挿管されたり、体中に管が入っているような人が普通にしゃべってご飯食べている姿を見ると、やりがいを感じますね。

松村 卓哉先生

同じく。ここで治療が始まっても3次病院かつ大学病院だから、完治までいるという患者さんはそうそういないんだよね。僕がたまたま外勤で行っている病院へ患者さんが転院していたりすると、元気に回復している姿が見られたりして。最初に頑張って良かったな、と思う。患者さんが回復する姿を見るのは、やりがいになりますね。

髙畑 絢子先生

そうだね。多発外傷の方とか、著明に回復する人も中にはいて。「こんなに回復するんだな」って思うよね。「もしかしたらずっと反応なく、このまま過ごしていくのか?」なんて思っていたら、劇的に日に日に良くなって。
今まで研修でいた病院は、たとえばそんな患者さんは大学に送っていて、その後のことを知らなかったんですけど。目の前で回復していく様子を見るとね。先生方が驚くような方も中にはいて、あきらめちゃいけないなと思います。

松村 卓哉先生

それに、ある程度理解はしていたけど、医療って医者だけじゃ成り立たないなと。朝の回診もそうだけど、やっぱり看護師さんや薬剤師さん…いろんな職種の人がいて回っている。おのおのが専門分野を持ち寄って、患者さん1人に向き合わないと、それぞれの知識量も偏っているだろうし、ドクター1人に任せてしまってはね。そんな人たちとうまくやっていくというスキルも大事なんだなと感じるし、打ち解けようと頑張っています。

國武 直人先生

多職種でという話では、病院の外の救命士さんとのかかわりってすごい大事だよね。
上の先生たちって「どうしてそこの救命士さんの名前知ってるの?」って。

松村 卓哉先生
髙畑 絢子先生

確かに!

國武 直人先生

いろんな人と仲良くなっちゃう仕事なんだろうなって。病院内だけじゃないですね。塚本先生は別格ですね。あそこに行きつけるかっていえばね…

Q.5年後、10年後…どんな救命医になっていきたいですか?

國武 直人先生

夢だから、大きくいきますね。病院内で何かあった時に一番最初に呼ばれる医者になりたいです。そういう医者を目指したいですね。

髙畑 絢子先生

カッコいい!!

松村 卓哉先生

細かく刻んで5年後あたりの直近の未来でいけば、まず、呼ばれるほどではなくても独り立ちをしっかりしたいですね。今は先輩や先生方にすぐ相談して…という環境にいるけど、2年後あたりには外の病院に一人で行かなければならないことも増えてくるだろうし。長い目でいえば、大学病院に入局している以上、若手を育てていけるドクターになりたいですね。5年目でそれをやろうとすると自分はキャパオーバーになるだろうから、そこまではしっかりと自分を高めて。大分の医療をよくするために、救命医なり他科の先生と一緒になって救命の知識だとか、10年20年で身に付けた自分のノウハウを、他に配っていくというか。そんな医者になりたいですね。

髙畑 絢子先生

私は今後、サブスペシャリティとして、救急以外の何かも取っていきたいですね。ここであれば、各診療科にすぐ連絡してパスすることが多いけど、それ以外の病院に行った時に自分がそのまま手術をするだとか。自分が執刀でないにしても、助手なら大体できる、とか何かしらできると良いなと思っています。これからどこを高めていくか考えていきたいですね。

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